映画の感想ぽいぽいします。

偏った趣味のアラサー女が書きなぐった好きな映画の感想をぽいぽい放り投げるブログです。Instagramからの転載、加筆修正。

岬の兄妹

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岬の兄妹
(2019年公開・日本・89分)
20190320 劇場で鑑賞。
個人的点数:92点。

片山慎三 監督作品。
これが初長編監督作品らしいです。
最近(国内外ともに)初めての長編なのに素敵な作品を撮る監督さんが多い気がしますが、また新たな才能が……!
秀作でした、観て良かったです。

港町でふたり暮らしをする、片足の不自由な兄・良夫と自閉症の妹・真理子。
良夫はある晩、真理子が男に体を許して金銭を受け取ったことを知ります。
その後リストラにあい困窮した良夫は真理子の売春のあっせんを始めますが、その中で今まで知らなかった妹の喜びや悲しみに触れ……。

ネタバレ?含みます、ご注意ください。
あと賛否が分かれることを書いているかもしれません。



兄妹ふたりのしんどい境遇や心の機微を描く作品、という認識で観に行きましたが、ふたりはもちろん脇を固めるキャラたちのこともしっかり描かれていて、予想以上に奥行きのある89分でした。
笑いどころもあって(中学生のくだりは衝撃の笑いでした)覚悟したほど重くはなかったですね……ヒリヒリはしましたが。

観る前の予想といちばん違ったのは、真理子が嫌々や無感情ではなく、楽しそうに売春となる行為をしていたこと。

もちろん売春は犯罪だし、いろいろよくわかっていない妹に体を売らせる兄というのは決して褒められたことではないです。

でもそれまでの真理子は、良夫が仕事に行っている間は外から施錠+足には鎖で自由には動けない状態(真理子の安全のためにやっていることだから責められないけど)。
良夫と一緒にいる時も、言うことをきかなくてよく怒られたりしています。

そんな彼女が出会った「冒険」。
やっていることは売春ですが、嘘でもかりそめでも男性(誰か)に必要としてもらえる、好きだと言ってもらえるというのは、真理子にとって今まで知らなかった喜びでした。
恋も知りました。
ずっと家の中にいて自分の存在理由もわからない日々を送るよりは、真理子にとっては「冒険」の日々は色づいていたのではないでしょうか。
いろいろな解釈ができそうなラストの真理子の表情が胸に残りました。

ともかく個人的にちょっと前から障害者の性処理問題に関心があったので、かなりいろいろ考えさせられる興味深いお話でした。
いや、関心があるだけで特に何もしてないんですけどね!

あとは何といっても役者陣が素晴らしいです。
ダメダメながらも懸命にもがいて生きる良夫を演じた松浦祐也さんも自閉症の妹を演じた和田光沙さんも、本当にこういう人なんじゃないか?と感じさせるような演技。
はんぱないです。
これからもいろいろな作品に出て欲しいですね。
良夫の友人役の北山雅康さんも良かった。

カメラワークも良かったよね。
絵になるショットもあったし、臨場感もあった。

映画が終わっても、あの兄妹はあの海辺の町でふたり、生き続けていく。
ぐさぐさと心に刺さる意欲作。

読んでいただきありがとうございます!
あ、邦画が続いていますがどこの国の映画でも観ますよー。